筆塗りの魅力(2013/03/24)

最近のRIVETはパール等を施すとき以外は筆塗りで模様を表現することが多くなりました。

「面倒ではないですか?」という私の問いに対して平本は
「細かい部分はエアーブラシを使うよりも筆の方がリアルに表現できるんだよ。
 エアーブラシを使うよりも多くの時間は掛かってしまうけどリアルなものを作りたいからね。」
と笑顔で答えてくれました。

確かに・・・例えばこのRIVET
ルアー製作を復帰した翌年、2002年に製作したヤマメカラー。
これはパーマークにエアーブラシを使っています。
そしてこちらは数年前のRIVET。
タイプが違うので単純に比較はできないですがパーマークだけ見てください。
とても自然に見えると思います。

平本は何種類もの筆を場所によって使い分けています。
平筆数種類、丸筆数種類、中には毛が3本、毛が1本しかない筆もあります。
それを使い極薄い塗料を重ね塗りしていきます。
重ね塗りとは言っても同じ色を何度も塗るわけではありません。(その場合もあります)
例えばこちらのRIVET。
私が管理釣り場へ遊びに行くと、いつも真っ先に投げるのでその分、ぶつけたり釣れたりするので見るからにボロボロですが、背中の部分を見てください。
鱗模様のをエアーブラシで施した後にこの色を出すために7つの色を重ねています。
それも、「え?その色?」と思うような色を最初に乗せていました。
しかも色が薄すぎて塗れているのか一見良く分からない状態です。

以前、ワカサギカラーの塗装風景を見せてもらったのですが箔の上に薄い色をスースースー・・と描く・・・・「え?終わり?」
「これ色、塗れているの?」
「斜めから見てご覧、薄く色が入っているでしょ。」
「確かに良く見ると色がついている気がします・・」(本当に微かに色が入っています)
「それを何回か繰り返すと自然な色になるんだ。一色入れるたびにコーティングしないといけないから時間は掛かるけどね」
こういうとき平本はとても良い笑顔になります。

上でも書いているように以前はエアーブラシを使うことも多かったですが筆塗りを多くするようになったきっかけがあります。
当時、兵庫に住んでいたK氏からのご注文である「銀箔アワビのブルックトラウト」です。
同時に作った一本を私が持っていますのでご紹介します。
これの背中の部分ですね。いわゆるブルックの虫食い部分です。
背中の部分をお見せすると
こんな感じです。
これは一度、模様無しの状態で塗装をし、筆で模様の一本一本の色を抜いていきます。その結果
こんなように虫食い模様の隙間からアワビの輝きが出てきます。
リアルという視点では少し違うかもしれませんがせっかくの銀箔アワビなのでそれを活かしたかったようです。
これを作った際に細かい表現は筆の方が良いという結論に至ったようです。

今では技術力も上がり、同じような模様でもこのような感じになります。(ブルックではなく鯖ですが・・)
ルアーに絵を描いているような感じですね。


絵といえば余談ですが平本のお母さまも素晴らしい技術を持っています。
私の家の居間に飾っているこの絵は平本のお母さま(当時80歳)が描かれたものです。
絵の一部をくりぬくようなことはしたくないのですが、あえて一部をアップにしますとこんな感じです。
おかげで居間にはいつも花が咲いているようです。


さて平本ですが、逆にこのような濃い色の塗装は若干苦手のようです。
レッドヘッドですね。
これは、私が夜に使いたくて無理にお願いして作ったもらったのですが、何度も失敗したようです。
その結果コーティングが厚くなりすぎてフローティングのはずがスローシンキングになってしまいました。
それでも管理釣り場で暗くなってからの一投目で59cmの♂ブラウンを引き出したのはさすがです。

他には開高マムシ系で蛇皮の模様を活かしたい場合も筆が活躍します。
蛇皮は自然なものなので当然ですがルアーの形にピッタリとは合いません。
継ぎはぎをしたときの境目に自分で模様を付け足したりしてします。
例えばこのRIVET。
「プラグの作り方」のときに作ったボディに蛇皮を貼りOLD風に仕上げたものです。
背面から側面、お腹は全く違う模様なので筆で模様を描いていくと・・・
こんな感じになります。
ちなみにこのRIVET、狭い空間でとても良い首振りをします。

そして同じ蛇皮でも元々の模様の少ない場所を使い、正に絵を描くように仕上げると・・・
これはエアーブラシは一切使わず全て筆で表現しています。
もっともこれが完成したときには平本もさすがに叫びました。
「割に合わない!もう作らない!」

でも機嫌の良いときに依頼すれば多分引き受けてくれます。

そんな感じで、いつもそのときのベストを尽くして作っていますが、今もまださらに進化しています。

悔しいのは写真に表現するのが難しくなっていること。

先日の売出しにあった上反り4.3cmのヨシノボリ。
売出しのときに使った写真は下記のものですが
売出しをしながら「実際はもっとキレイなのにな・・・」と思っていました。

その後「売約済み」になった際、試しにフラッシュを焚いて撮ってみたところ大分近い状態で撮れましたがマテリアルが光ってしまい細かい部分が分かりづらくなってしまいました。
この辺りは私の課題だと思っていますが、「実際に見てもらえたらな・・・」と思うことが多々あります。

筆塗りにすることで一本一本を作る時間が完成度に比例して長くなっていますが、平本も「作れる間は頑張る」と言っています。
そんな平本とRIVETを、これからもご贔屓いただけると幸いです。
宜しくお願い致します。
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